歯科院内感染、進まぬ対策〔読売新聞〕
2017.08.30
患者ごとの機器交換・滅菌...費用がネック
ウイルスや細菌を患者にうつすリスクがある、歯を削る医療機器の使い回し。厚生労働省研究班が今年明らかにした調査でも、半数近くの歯科医療機関が、患者ごとの交換を厳密に行っていない可能性があることがわかった。改善には何が必要なのか。
■手袋・マスク着用
東京都品川区の「うらら歯科ケアクリニック品川」院長の矢島 麗うらら さんは昨年、自身のB型肝炎ウイルスの検査結果に驚いた。ウイルスを攻撃する抗体の量が大幅に増えていたからだ。免疫の働きで体内にウイルスはなく、患者にうつす心配は全くないが、医師によると、治療した患者から一時的に感染した疑いがあるという。
感染源の可能性がある患者の血液や唾液に触れることが多い歯科診療において、歯科医や歯科衛生士は手袋やマスクなどを着用することなどが日本歯科医学会の院内感染対策の指針で薦められている。矢島さんも診療時にこれらを必ず着用し、注意を払っていた。
「感染のリスクは減らせるがゼロにはできない。患者への感染を防ぐ対策も、やれることは最大限やるべきだと改めて思った」と矢島さん。同クリニックは2015年の開業以来、歯を削る際に歯科医が手にする「ハンドピース」という医療機器を全ての患者ごとに交換。その後は、高圧蒸気を発生するオートクレーブという装置に入れ、細菌・ウイルスを死滅させる処理を行っている。「滅菌は費用も人手もかかるが、手を抜けない」(矢島さん)
■「報酬加算が必要」
しかし全ての歯科が、ハンドピースの交換・滅菌を行っているわけではない。日本歯科医師会会員1000人に行った同省研究班のアンケート調査によると、「患者ごとに交換」が52%だったのに対し、「感染症患者とわかった場合に交換」「血液が付いた場合などに交換」「消毒薬で拭く」の合計は46%だった。
厚労省は14年6月、都道府県などを通じ、歯科医療機関にハンドピースの滅菌を求める通知を出している。歯科医師会も歯科医向けの講習会で滅菌の必要性を説明し、啓発に努めている。なぜ、使い回しはなくならないのだろうか。
要因で多くの歯科医が指摘するのは、滅菌にかかる多額の費用だ。高機能のオートクレーブの導入には、約100万円。その他必要な設備も入れると300万円以上かかることもある。
ハンドピース以外にも、歯を削る際に出る粉じんの吸引や、患者のいす周辺の清掃など、歯科に求められる院内感染対策は多岐にわたる。ハンドピースの滅菌を含む院内感染対策費について、広島県歯科医師会医療管理部は、患者1人当たり1058円とする試算結果を16年に発表している。
これに対し、医療サービスの公定価格である診療報酬の歯科再診料は、院内感染対策を行った場合の加算も合わせて500円だ。日本医業経営コンサルタント協会副会長の永山正人さんは「歯科の診療報酬は医科に比べ低く抑えられている。診療報酬に院内感染対策を強化する新たな加算が必要」と主張する。
一方で、院内感染対策に取り組めるようになるためには、永山さんは「クリニックの経営を安定させることが大事」と話す。同協会は11月12日に東京都品川区で、開業準備中の歯科医向けに歯科診療所の経営の基本に関する講座を開く。
18年4月は、2年に1度の診療報酬の改定の時期となる。日本歯科医師会は、院内感染対策の費用をまかなう基本診療料の充実を求めていくという。
矢島さんは「患者、歯科医双方にとっていい環境を整えられるよう議論を深めてほしい」と話す。
(2017年8月28日 読売新聞・渡辺理雄)
https://medical-tribune.co.jp/news/2017/0828510504/
より転載
読売新聞さんのもう定期的な記事ですね。滅菌している施設が少しは増えていることはなによりです。
当医院は開業当初から全ての方に歯を削る機械は数をそろえて毎回滅菌していました。
なぜそうしたかったいうのは単純明快 自分自身が通える歯医者さんにしたいからです。
だかrふぁコスト面でもきついことはありましたが高圧蒸気滅菌器でもなく アルコールを使ったケミクレーブを導入していました。
もうそろそろこんな記事が出なくなるような一般常識になって欲しいですね。
でも 胃カメラや大腸ファイバーはなんで叩かれないんでしょうね。