歯の神経が短期間に死滅するしくみを世界で初めて解明 ~歯の神経を死滅から救う治療法の開発に期待~
2019.03.12
歯の神経が虫歯や酸、熱等でダメージを受けると激しい痛みを伴った急性炎症が引き起こされ、通常歯の神経は数日内に完全に死滅します。しかしながら、なぜ歯の神経組織でこのような激しい炎症がしかも短期間で引き起こされるのかについて、詳しい仕組みはわかっていませんでした。
九州大学大学院歯学研究院の西村英紀教授らのグループは東北大学歯学研究科の鈴木茂樹講師、広島大学医歯薬保健学研究科の柴秀樹教授らと共同で、歯の神経に存在する細胞が弱いストレスを受けると、ストレス顆粒と呼ばれる顆粒を細胞内で形成し、この顆粒が細胞外微粒子に内包されて分泌され免疫細胞(白血球)に働きかけ強烈な炎症反応を起こすことを突き止めました。ストレス顆粒は様々なタンパク質や遺伝子で構成されていますが、内部に活性化 Protein kinaseR (PKR) と呼ばれる細胞内信号を伝えるタンパク質が存在し、この PKR が炎症の指令を免疫細胞に伝える本態であることも突き止めました。歯の神経が死滅すると歯の内部から歯に栄養を供給する血流が途絶えるため、歯がもろくなります。また、死滅するときには非常に激しい痛みを伴います。したがって、神経が死滅する仕組みを解明することは歯科における重要な課題でした。
本研究の成果により、PKR の活性を抑えることで将来的に歯の神経の死滅を防ぐ治療法の開発が期待されます。またこの発見が、神経変性疾患や難治性の自己免疫疾患などの他の病気の病因の解明につながる可能性も秘めています。本研究成果は、英国の学術誌 Scientific Reports で3月7日(木)19:00(日本時間)にオンライン公開されました。
研究者からひとこと:
歯の神経の細胞が、強力な炎症を引き起こす物質を分泌することを、約 10 年前に発見しました。しかしながら、この物質の本態を様々な方法で解明しようと試みたにも関わらず、その本態はつかめないままでした。
ところが、数年前からいろいろな細胞が細胞外に微粒子を分泌し、その内部に細胞間のコミュニケーションを担う重要な物質が内包されていることが明らかになってきました。そこでこの細胞外微粒子に注目して、再度本態の解明を目指しました。あきらめずに粘り強く、研究を継続したことが今回の発見につながったものと考えています。(文責:西村)
https://research-er.jp/articles/view/78000?fbclid=IwAR2Ed3HFDjyuaRQhFM7MnSXdIR66TNFSphiJ8ll-DgL5dZJdYIL1jHXwqRw
歯髄に炎症が起こるシステムがはっきりしたことにより、今まで歯髄を取らなければならない前に薬物療法的なもので神経が死んでいくことを抑えられるという治療法につながります。
今までは理論としては歯髄が炎症を起こして歯髄壊死 歯髄 を起こすことは知られていましたが原因タンパクを同定できたというのは極めて今後の治療に役に立ちます。
歯髄をとるということは 歯を枯れ枝と同じ状況にするので栄養供給が立たれ歯の色も変色したり 歯が質としてもろくなったり 土台を入れることによって歯が折れる危険性が増したりします。
何よりも神経を取らなければいけなくなる前に受診して治療することが一番なのですが、虫歯でなくとも歯ぎしり等で歯の神経が自然に死んでしまう時もあります。
いずれにしろメインテナンスが大事なんです。