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サンスター、唾液中のフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の上昇が歯周病進行に関係することを発見サンスター、唾液中のフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の上昇が歯周病進行に関係することを発見

2022.08.03

サンスター、唾液中のフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の上昇が歯周病進行に関係することを発見サンスター、唾液中のフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の上昇が歯周病進行に関係することを発見

サンスターグループ(以下サンスター)は、20〜75歳までのサンスター従業員611名を対象に、歯周病の病態(進行状況)と唾液に存在する細菌種の関連性を調査しました。その結果、特に歯周病の悪化に影響を及ぼす歯周病の悪玉菌として知られるPorphyromonas gingivalis(ポルフィロモナス・ジンジバリス)、Tannerella forsythia(タンネレラ・フォーサイシア)、およびTreponema denticola(トレポネーマ・デンティコーラ)などのred complex(レッドコンプレックス)*1と位置付けられる細菌が、歯周病の病態の悪化に伴い唾液中で増加していることを確認しました。

これは病態の悪化によって生じた歯周ポケット内のデンタルプラーク中にて増加したと考えています。さらに、Fusobacterium nucleatum(フゾバクテリウム・ヌクレアタム)と呼ばれるこれまであまり注目されてこなかった細菌の増加も確認しました。フゾバクテリウム・ヌクレアタムは、歯周病の原因となるデンタルプラーク(歯垢)の形成において中心的な役割を担ったり、また歯周病菌の増殖を促したり、さらに近年の医学界では、大腸がんの発症と密接に関係することも報告されています*2。

このたびの成果は、歯周病の悪玉菌を制御することに加えて、歯周病菌の増殖を促すフゾバクテリウム・ヌクレアタムの制御という歯周病重症化を防ぐ新たな戦略へとつながるものであり、サンスターは歯周病に罹患していない人のみならず、歯周病治療後の再発しやすい人への口腔ケア製品へと進化させていきたいと考えています。この研究成果を「第65回春季日本歯周病学会学術大会(2022年6月3日(金)~6月4日(土)、於:東京、京王プラザホテル)」において発表いたしました。また、フゾバクテリウム・ヌクレアタムの殺菌制御に関する取り組みについても同一の学会にて発表いたしました。

<研究概要>
◆研究の背景・目的

歯周病は、歯を支える歯周組織(歯槽骨、歯肉など)への歯周病菌の感染によって生じる炎症性の疾患で、歯を失う主原因であることが知られています*3。日常における歯周病予防では、歯と歯肉や、歯と歯の間に形成されるデンタルプラーク(歯垢)と呼ばれるヌルヌルした細菌のかたまりを、ハブラシや歯間清掃具などで物理的に除去し、殺菌剤を含む液体製剤などを活用してお口を清潔に保つことが重要となります。
サンスターでは、これまでに歯周病菌の中でも悪玉菌として注目されているポルフィロモナス・ジンジバリス、タンネレラ・フォーサイシアやトレポネーマ・デンティコーラなどの制御に効果的な殺菌剤塩化セチルピリジニウム(CPC)を早期に見出し、その有効性を最大限発揮できる処方開発を行うことで、歯周病菌とたたかってきました。
しかしながら、日本の歯科疾患実態調査では、高齢者の残存歯数の増加もあり、20代以上の約70%が歯周病に罹患している*4という状況があり、今後も歯周病罹患者が増加する可能性があります。そこで、サンスターでは、歯周病重症化予防の新たな戦略の糸口をつかむ目的で、20〜75歳のサンスター従業員611名を対象に、歯周病の病態(進行状況)と唾液に存在する細菌種の関連性を調査しました。

◆対象者属性と方法
本研究では、調査参加に同意が得られた20〜75歳のサンスター従業員611名を対象としました。被験者から唾液を採取し、次世代シークエンサーを用いて、各サンプルから口腔細菌由来の遺伝子を調べ、細菌叢と歯周病との関連性や、さらにレッドコンプレックスとフゾバクテリウム・ヌクレアタムとの関連性について解析を行いました。

<研究結果>
1. フゾバクテリウム・ヌクレアタムは、歯周病発症と高い関連性を示す

唾液におけるフゾバクテリウム・ヌクレアタムの存在の割合に応じて、3つのグループ(0.2%未満;、0.2~1.0%、1.0%以上)に分類し、Community Periodontal lndex  (CPI, 地域歯周罹患指数) *5との関連性を評価しました。その結果0.2%未満と比較して、0.2~1.0%、1.0%以上と増加するにつれて、歯周ポケットを有すると判定された人の割合が高くなりました(図1a)。さらに図1aのフゾバクテリウム・ヌクレアタムが1.0%以上存在するグループにおいて、レッドコンプレックスと歯周病との関連性を同様に確認したところ、レッドコンプレックスの割合が増加するにつれて歯周ポケットを有すると判定された人の割合が高くなりました(図1b)。

左:図1a フゾバクテリウム・ヌクレアタムの唾液中の割合とCPIの関係  右:図1b フゾバクテリウム・ヌクレアタムの唾液中の割合が高いグループ(≧1%)におけるレッドコンプレックスの割合の違いとCPIの分布


2.フゾバクテリウム・ヌクレアタムの量は、口腔内細菌叢の組成に影響している
フゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合に応じて、3つのグループ(0.2%未満、0.2~1.0%、1.0%以上)に分類し、口腔内細菌叢*6の組成との関連性について、主成分分析によりβ多様性*7を評価しました。その結果、3つのグループに違いを確認することができました(図2)。この結果からフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合は、口腔内細菌叢の組成に影響している可能性が示唆されました。

図2 フゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合に応じて分類したグループのβ多様性

3. フゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の増加は、レッドコンプレックスを増加させる
フゾバクテリウム・ヌクレアタムが口腔内細菌叢の組成に影響していることから、フゾバクテリウムの割合の増加に伴って増加する口腔内細菌の関連性を調べました。その結果、フゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の増加に伴い、レッドコンプレックスの増加を確認することができました(図3)。この結果からフゾバクテリウム・ヌクレアタムは、レッドコンプレックスと凝集し互いの増殖に影響を及ぼすことが示唆されました。

図3 フゾバクテリウム・ヌクレアタムとレッドコンプレックスの保有割合にて表した散布図

<今後の展望>
以上の結果から、フゾバクテリウム・ヌクレアタムは口腔内に定着することで、レッドコンプレックスの増加を促進させ、歯周病の悪化・進行に関与している重要な口腔内細菌であることがわかりました。近年フゾバクテリウム・ヌクレアタムは口腔内外のがんなど歯周病以外の全身の様々な疾患との関連が注目されています*8。特に大腸がん患者の腸内からはフゾバクテリウム・ヌクレアタムを含む多様な口腔内細菌が高頻度に検出されていることに加え、口腔と同じクローンを検出したことも報告されており、大腸がんにおけるフゾバクテリウム・ヌクレアタムの役割の解析が進んでいます*9。
このようにフゾバクテリウム・ヌクレアタムは歯周病のみならず全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、「口腔から全身の健康」を考える上で、歯周病の予防・治療に向けた新たなターゲットとして考える必要があります。今後、サンスターは、フゾバクテリウム・ヌクレアタムを殺菌することで、口腔内細菌叢を変化させ、歯周病を予防する新たな戦略を提案していきます。

<Fusobacterium nucleatum (フゾバクテリウム・ヌクレアタム)について>

本菌は、歯周病の原因となるデンタルプラークの形成において、重要な働きをする口腔細菌として知られています。
グラム陰性の嫌気性細菌であり、本菌菌体表面に様々な付着因子を持ち、口腔内のあらゆる部位から検出されることも知られています。とくにデンタルプラーク形成において、歯周の健康な人に多く存在する細菌種や歯周病の悪玉菌であるレッドコンプレックスなどを連結する役割も持っています。フゾバクテリウム・ヌクレアタムは、歯周病の病態に深く関わる歯周ポケット内の歯肉縁下プラークの形成に重要な働きをしているにも関わらず、いわゆる歯周病の悪玉菌に比べて、注目度ははるかに低いのが現状です。しかしながら、フゾバクテリウム・ヌクレアタムの口腔内での存在量やその病原性を加味した場合、歯周病予防のために制御すべき細菌として注目され始めています。

サンスター、唾液中のフゾバクテリウム・ヌクレアタムの割合の上昇が歯周病進行に関係することを発見|サンスターグループのプレスリリース (prtimes.jp)    より転載

歯周病の原因菌はほぼ特定されています
ただ20-30種類同定されている歯周病原因菌がどのような役割を果たすのか まだまだ未解明な部分が多いのです

基本的に治療は デンタルプラーク 歯垢に常在している歯周病菌の除去 プラークコントロール
歯周病菌に侵された歯肉に対する外科的処置
失われた骨に対する処置

というような形で治療が進むのですがもし歯周病の原因菌の働きが明確になれば その菌に対する処置 例えば薬剤のドラッグデリバリーシステム とか内服薬 等々別の治療に対するアプローチも出てきます

まぁどんなに特効薬が出ても私の尊敬するメンターの一人 北海道大学名誉教授j 故石川純先生のお言葉通り
歯周病を治す特効薬はただ一つ 歯ブラシのみ
は変わらないと思いますが

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